会長挨拶

第44回日本中毒学会総会・学術集会を開催させていただきます。本来ならば、高知県で開催させていただき、皆様に南国土佐の魅力をお伝えしたかったのですが、様々な事情を鑑みWeb開催とさせていただきました。申し訳ございません。

今回の学会テーマを「真摯に向き合う中毒診療」とさせていただきました。救命救急センターで勤務していた当時、中毒の患者さんの多くは、精神的背景だけでなく様々な事情・背景を持たれていることがあり、若い先生方と診療していると、命を助けるべき救急医が、なぜ命を自らの意思で断とうとする患者さんを助けるのか、など質問され夜を徹して議論したこともありました。中毒診療では、自らの感情が交差してしまうことがありますが、大切なことは、しっかりと患者さんと向き合うことである、という思いから、今回のテーマとさせていただきました。皆さんはどのようにお答えされるのでしょうか。

大会期間中の特別講演1を日本医科大学形成再建再生医学分野小川令教授にお願い致しました。小川先生はケロイド診療の世界的権威で、再診率が高いリストカット痕をもつ中毒の患者さんを、美容的に、外科的にアプローチしていただき、中毒診療に新たな面から向き合っていただこう、という趣旨です。特別講演2は和歌山県立医科大学法医学教室の近藤稔和教授にお願いしました。現在公判中の事案で大変お忙しい中、中毒診療と法医学との連携について、御提言を踏まえて、ご講演していただく予定です。

今年、日本中毒学会から、「改訂急性中毒標準診療ガイド」が出版されます。医学部教育に携わっていますと、古い概念での教育がいまだ継続されていることを実感し、また違和感をもちます。これは医師に限らず、多職種の方々との議論の中でも感じます。今回シンポジウム「中毒教育」を設定させていただき、多職種での中毒教育の在り方、今後の方針について議論していただければと思っています。

私は1991年に日本医科大学救急医学教室に入局して、地下鉄サリン事件、新宿歌舞伎町の火災CO中毒、現在公判中の事件の資料提供に関わるなど、様々な経験をして、現在高知県に赴任していますが、高知では自然毒が多いなど、都会とは違う中毒事情を経験しています。ワークショップでは都会と地方の中毒、さらにコロナ禍での中毒診療についてご議論をいただければと思っています。

教育講演やトキシコロジスト認定セミナー・更新セミナー、フォトコンテストも用意させていただき、多くの先生方の御参加をお待ちしております。また市民公開講座で高知県の医療にも貢献したいと思っています。

開催時期も含めて、日本中毒学会総会は熱い議論の学会です。是非皆さま方のご協力を賜り盛り上げたいと思っております。

どうぞよろしくお願い致します。

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